| 笹川良一郎 |
当研究会、会長。
Ewigheit Bachの諸論文との出会いを契機として、メイドに関する研究活動を開始。旧来の要素を継承しつつ、なおかつ現代的に修正・変容を加えたメイドに関する、体系的な議論を構築できるよう(メイドの現代的再構成)、作業を継続中。他方、近時は、18世紀から20世紀にかけてドイツで存在していた「奉公人」(Gesinde)に対して強い関心がある。 |
| 大島 |
大島:
世の中には「メイド=奴隷」という考え方があって、あらゆる暴力(精神的・肉体的・性的暴力)を集中させるためのターゲットとしてのみメイドをみている人がいるのですが、これはどうなんでしょうね。
このメイド奴隷観の問題点がどこにあるのかというと、メイドを矮小化している点にあります。メイド奴隷観は、メイドとの生活がとりうる多様なバリエーションのうちごく一部のみをクローズアップし、他の局面を無視してしまっている。たとえばメイドさんとのハート・トゥ・ハートの関係、二人でのんびりお茶をしたり、メイドさんが夢にやぶれたご主人様をなぐさめてあげるような、そういう情景を切り捨てている。メイドは主人の気ままで雑でひとりよがりなセックスの相手、というシーンしか描写されていない。
そして、この矮小化を克服し、メイドのメイドらしさを十全に発揮させるためには、メイド奴隷観に対してカウンターを当てなければならない。重量のあるアンチテーゼを対置し、メイドが我々の人生のあらゆるシーンに登場することをアッピールし、メイドのイメージの幅を確保する。「メイド=奴隷」という考え方がいかに狭小であるかを世界中に伝えるのです。そしてそれが東大メイド研の目標のひとつでもある。
たとえば、ポルノ業界では「看護婦=淫乱」というパターンができていて、あれはいったいなんだろうと思うけど、でもそれは確立してしまっていて、さらに都市伝説としてポルノ業界の外側にも拡散し、一般人の頭の中にも侵入しつつある。同様に、メイドについても「メイド=奴隷」というパターンが流布する危険性はあるわけです。「メイドさんが好きなんです」と人に言ったら、「え、あなたサディストなんですか?!」と返されちゃうようになるかもしれない。
それを避けるには、メイドが奴隷じゃないという物語を生産し続けるしかないし、また、「女優にメイド服を着せればメイドのできあがり〜」といった安直な発想でメイドを貶め(おとしめ)続けるアダルトビデオ関係者ら便乗商人に対し、みずからの思想性の無さを自覚させるだけのパワーのある理論を整備する必要があるわけです。メイドについてのゴツい論文が一本あるかないかで、文化シーンはガラリと変わると思う。メイドさんは性の玩具じゃない。我々は日本メイド界の礎石になるべく、研究を続けなければならないのです。
(『メイド学撮要』対談より抜粋)
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| 神宇霧人 |
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| 鴨沼翔子 |
イラストレーター。
2000年の創設以来、当研究会の刊行物のイラスト製作を一貫して担当。 |
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